夏休みの思い出
2004/8/17未明

---峠でひっくり返りました---


「…ここ携帯の電波通じねえぞ」
「…やばいすね」
「足チョー痛いんすけど、骨折してますかね?」
「そりゃあんだけぶつかれば、なぁ」
「車ひっくり返ってますからね」
「いてーっす、いてーっす」
「救急車と警察呼ばなきゃ」
「…どうやって?」
「むぅ」


時間はAM3:00。暗闇の中で立ちつくす3人(とはいっても、一人はとても立ってなどいられず横たわっている)。

えーっと、一体何が起こったのだろう。

ここは多分、青梅街道だと思う。「思う」とはっきりしないのは、自分で運転していた訳ではなく、後部座席でまったりしていたから、どこを走っているのかなど興味がなかったからである。ドライブを兼ねて山梨県内の温泉に向かっているところで、小一時間峠道が続いていたから、多分そうなのだろう。山のど真ん中なのだろうか、携帯は全く圏外であり、そういえば最後に電話ボックスを見たのは確か30分くらい前だったような気がする。どころか、民家を見たのも同じくらい前である。つまり、とてもそこまで歩いて行けなさそうなのだ。おそらく前に進んでも同じであろう。つまり、警察や救急に連絡する手段がないという、全くの八方ふさがりである。

「…これって遭難じゃない?」
「そうともいえないこともないですな」

実際それくらい心細かったのである。一人は奇跡的に(全くの奇跡的である)無傷であるが、運転者は足の激しい痛みを訴えているし、顔はステアリングにでもぶつけたのだろうか、右の目の上が腫れていて、まるでホラー映画のようになっており、「イタイっす」としか発言が出来くなっている重傷患者。自分はというと、幸い後部座席ながらシートベルトをしていたため、ぶつけたりした様子はないのだが、動かすと首が禿しく痛いので、多分むちうちであろうが、首回りに限らず怪我の素人判断は禁物である。早いとこ病院で検査してもらいたいところだ。が、状況は先ほど述べたとおりであり、我々に出来ることと言えば、夏とは思えぬ肌寒さに震えながら、車が通るのを待つだ けであった。


「みんな、ホントすいません」
「今はそんなこといいから。オマエの怪我が一番酷いんだからじっとして黙ってなさい」
「だいぶ痛いっす」
「折れてるだろうからな」
「しかも冷たいっす」
「血ぃ出てるんじゃねえか?」
「どれどれ…うわぁ」
「うわぁてなんすか、うわぁて!やばいんですかね、オレの足てば?」
「…うん、大丈夫だ、多分(うわぁとか言うなよ)」
「(すいません)大丈夫ですよ、大丈夫」
「……うわぁって言 ったじゃないですか」


そんなコントのようなやりとりをむなしく繰り広げたところで、聴ているのは山の木々と、その間から見えるお星さまと、さっきから聞こえている川の水音と…

川?

「って、この下、崖じゃない?」
「…ほんとだ」
「…ガードレールあって良かった…」
「つうか車ひっくり返ってんべ?もしあっちにひっくり返ってたら…」
「 (((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル」


全くもって(((( ;゚д゚)))アワワである。左コーナーを曲がったところで後輪が滑ってしまい、あわててカウンターを当てすぎたうえにアクセルコントロールミス、といった感じだろうか。右フロントサイド(右前輪あたり)からガードレールに突っ込み、気がついたら逆さまであった。事故直後の様子はこうである。


「(。A 。 )だいじょぶかー」
「(_Д_)みんな生きてる?」
「(_ ~_)とりあえず脱出シル!」


ちょっとのんきに見えるのは無論フィクションである。
とにかくひたすら待つこと1時間半くらい、その間に通った車はたったの4台。そのすべての車に警察と救急への連絡をお願いして、やっと警察と救急の到着。助かった…



と思っていたのだが…

続く